isiwari

『静寂の墨色と、岩を穿つ生命の線東北桜巡り』


【弘前公園の夜桜】2005.5

教員生活で長期の休みが取れ、最初に辿り着いた弘前の夜。水面に映る桜(ソメイヨシノ)は、まるで鏡文字のように完璧な対称性を保ち、実体(表)と投影(裏)の境界を曖昧にします。暗闇を墨色と捉えられ、ライトアップされた桜の「白抜き」の画像は、水面に映る「裏」の美学です。この「余白」の美しさは、作品を構成する上での大切なヒントになりました。

【盛岡 石割桜】2005.5

長年の念願だった石割桜との対面で、石割桜に宿る「渇筆」の生命力の凄さを感じましたね岩の冷たい質感と、そこから溢れ出す柔らかい桜(エドヒガン)の対比は、まさに「剛」と「柔」の共演です。樹齢数百年の歳月が刻んだ幹の皺は、どんな名筆も及ばない重厚な線を空間に描いていました。巨大な花崗岩を割り、なお伸びゆく幹の動きを、掠れを伴う力強い筆致に捉えました。