大日本家庭音楽会発行標準箏曲楽譜 青柳

思索ノート
Notes on Beauty and Time

 琴のねに峰の松風かよふらし
  いづれのをよりしらべそめけむ(斎宮女御 拾遺451)

この歌を読むたびに、私は人が奏でる音と自然の音は、本来別々のものではないのだと思います。

琴の音は松風に寄り添い、松風は琴の音を包み込みます。

                   「青柳」の譜面

「箏曲千年の流れ」

  1. 平安時代
    • 雅楽の「越天楽」
    • 宮廷文化の中で育まれた音楽
  2. 江戸時代
    • 八橋検校による近世箏曲の確立
    • 「六段の調」「みだれ」など
    • 「青柳」のような古典箏曲が広く親しまれる
  3. 近代
    • 宮城道雄が伝統を受け継ぎながら新しい箏曲を創作
    • 『春の海』『瀬音』『水の変態』など

『青柳』の歌詞には、平安の美意識が今も息づいています。和歌を筆で表現する書と、和歌を音で表現する箏。どちらも千年の時を越えて受け継がれてきた日本文化なのです。

どちらが先に響き始めたのか分からないほど、一つの世界となっているのです。

私は書を書くときも同じことを考えます。

一本の線は、筆だけが描いているのではありません。

墨、紙、余白、そして見る人の心が響き合って、一つの線となります。

私にとって書とは、音のない音楽なのです。

円は

始まりも終わりもありません。

琴の旋律も、

終わったあとも余韻が続きます。

この二つはとても似ています。

円は閉じた形ではありません。

琴の音が余韻を残すように、一本の線もまた、時を越えて静かに響き続けます。

                   桂泉作