葦手

私が目指す一本の線

篠田桃紅、石川九楊、飯島春敬、岡倉天心──私が影響を受けた方々は、それぞれ異なる立場から、「一本の線」がいかに空間と時間を形づくり、人間の精神や文化を表現するかを問い続けてきました。

私は、その思想に深く共感しながらも、自らの制作を通して一つの考えにたどり着きました。

線は、時をつなぐ。

一本の線は、一瞬の運筆によって生まれます。しかし、その一筋の線の中には、千年の時を超えて受け継がれてきた言葉や文化が息づいています。古今和歌集や拾遺和歌集をはじめとする古典和歌から近現代の詩歌に至るまで、日本の文学と美意識は一本の線によって今日へと受け継がれてきました。

私の制作では、和歌、かな、絵画、自然、そして人を、「線」という一つの概念によって結び直すことを試みています。直線的な散らし書きから円環構造へ、さらに三十六歌仙に象徴される人物伝承へと展開する空間構成の中で、線と余白を一体のものとして捉え、過去・現在・未来をつなぐ時間の流れを表現しています。

作品集の構成を「線―円―人―継承―未来」としたのも、そのためです。私にとって一本の線とは、単なる造形ではありません。線は、時間であり、文化であり、継承そのものなのです。

私が描き続けたいのは、過去を写す線ではありません。文化を未来へ受け渡す一本の線です。