仙厓義梵「一円相画賛」 出光美術館蔵
思索ノート
Notes on Beauty and Time
円は、不思議な形です。
なぜ、たった一本の線が、これほど豊かな時間を語ることができるのだろう、と。
禅では、この円を「円相」と呼び、悟りや真理を象徴するものとして、多くの禅僧が描いてきました。
その中でも私が惹かれるのは、仙厓義梵の《一円相画賛》です。
「喫茶去(きっさこ)」という禅語を、「これ食うて茶のめ」と軽やかな言葉に置き換え、円相さえも饅頭に見立ててしまう。その自由さとユーモアには、思わず微笑んでしまいます。
しかし、その軽妙さの奥には、悟りとは遠い世界の話ではなく、日々の暮らしの中にあるものだという、禅の深いまなざしが感じられます。
私は円を見るたびに、完成した形よりも、一筆で描かれた時間を見ています。
円は、一瞬で描かれます。
しかし、その一瞬には、呼吸、筆の速さ、ためらい、心の動きが、そのまま現れます。
同じ円は二度と描けません。
だから私は、円とは「形」ではなく、「時間」が見える線なのだと思っています。
書もまた同じです。
一本の線は、その瞬間にしか生まれません。
そして余白は、その線が通り過ぎた時間を静かに包み込んでいます。

桂泉作<仙厓禅語より>
私にとって円は、終わりのない形ではなく、終わることのない探求そのものなのです。